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女性起業家たちが実践するワーク・ライフ・バランス
~ライフステージに合った働き方のヒント~

2010年10月29日

株式会社コラボラボ 代表取締役 横田 響子氏

東京都の女性の起業者数(現在の事業を自ら起こした者)は、137,100人(※)

女性の起業者数が全国で最も多いのは東京都です。

今回のコラムは、女性起業家のワーク・ライフ・バランスについて、女性起業家を支援する株式会社コラボラボ、代表取締役の横田響子氏に執筆してもらいました。

(※)平成19年就業構造基本調査(総務省)より



現在、コラボラボという会社を運営しております。コラボレーションが増える世の中にという想いに加え、小規模な企業が多い女性起業家たちのコラボレーションやシェアを促進することで事業継続をサポートしたいと「女性社長.net」というコミュニティーを始めました。年に一度表参道で女性起業家が300名集まるイベントを主催するなど、女性起業家から日本を明るくすべく奮闘しています。

日々、多くの女性起業家たちから学ぶことが私自身たくさんあり、さらに彼女たちはワーク・ライフ・バランスの達人が多く驚かされる日々です。多くの試みの一部を今回はシェアさせていただきます。

女性起業家はワーク・ライフ・バランスの智恵の宝庫

ワーク・ライフ・バランスといえば、「育児」・「介護」との調和が筆頭にあがりがちです。しかし、ワークとライフの「バランス」の取り方に関するニーズは個々人によって多様です。キャリアアップのために勉強がしたい人もいれば、新しくできた恋人とのデートの時間を確保したい人もいます。また、この「バランス」に関する希望は、結婚、出産をはじめとするライフステージの変化に応じても変わっていきます。このように、個々人が人生の各ステージにあわせてうまく働き方を調整しようというのがワーク・ライフ・バランスなわけですが、女性起業家には、自身としても、また、雇用主としても、ワーク・ライフ・バランスの達人がたくさんいます。女性起業家は、まさにワーク・ライフ・バランスの智恵の宝庫なのです。

女性起業家はワーク・ライフ・バランスの達人

女性起業家の智恵の一端として、経営と子育ての両立の事例をご紹介してみましょう。

『昼ミックス型』 Aさん(47歳・女性)は、衣服の製造販売を行う会社の経営者です。忙しい日々を送るなか、3人のお子さんを育ててきました。その秘訣は「ワーク・ライフ・ミックス」。仕事と子育ての時間を分離せず、同時にこなしてしまうことにしたのです。会社に出勤する時も、仕事の打ち合わせに外に出る時も、子ども達と一緒。子ども達と時間を過ごしながら、仕事にも取り組む。これは、昼間の仕事と育児を両立させた「昼ミックス型」の一例です。

『夜ミックス型』 Bさん(37歳・女性)は、人材派遣会社の経営者です。経営者はネットワークが大切、ということで、夜の会食や宴会の誘いがたくさんあります。でも、小さい子どもがいるので、夜遅くに出歩くのは難しい。そこで、9時以降のお付き合いは、全部自宅ですることにしました。自宅でお子さんの寝顔を確認しながら、ゆっくり美味しいお酒を飲む。招かれた方も、Bさんの家族にふれることで、より関係性が深まる。これは、「夜ミックス型」といえるでしょう。

『コミュニティー型』 Cさん(41歳・女性)は、キャリア系サイト運営会社の経営者です。両親も親戚も遠方に住んでいるCさんが、仕事をバリバリしながら子育てをするために思いついたのは「コミュニティー」の活用。親族に頼らず子育てをするためには、最低6人の協力者が必要、と考えたCさんは、妊娠前から、子育てに協力してくれる友人ネットワークづくりに励みました。そして、今も、そのネットワークに支えられながら、仕事と子育て両方をバリバリ楽しんでいます。

もっともっと紹介したい例がたくさんあるのですが、この3人の女性経営者の例をみるだけでも、それぞれが工夫を凝らして、仕事と子育てのバランスを上手に取っていることが分かります。


 

女性起業家は「いい雇用主」

例えばDさんは、ビジネスコーディネートを得意とする会社を経営しています。この会社では、コミュニケーションツールを活用して、以下のように、社員1人1人のニーズにあわせた勤務形態を実現しています。現在従業員8名で運営をしており、女性が多数派の会社です。

『プロフェッショナル非常勤型』 役員Eさん(35歳・女性)は、健康上の理由からフルタイムで勤務することができず、会社に出勤するのは月に数回程度です。しかし、電話会議で随時情報を共有し、スポットスポットで営業や交渉など専門性の高い仕事を行っています。

『フィックス長時間労働→フレキシブルフルタイム型』 社員のFさん(40歳・女性)は、プライベートの時間を大切にしたいと思い、大企業を退職しました。大企業で働いていた時は、いわゆる仕事第一人間で、24時間戦っているような状況でした。今は、仕事の繁忙期にはバリバリ仕事に生きる一方、仕事が落ち着いている時期には勤務量を調整して、デートや長期旅行を楽しんでいます。

『ならし運転型』 社員のGさん(29歳・女性)は、結婚退職して2年ほど仕事を離れていましたが、そろそろ仕事に復帰しようとこの会社に入りました。ブランク明けなので、ITツールの進化やビジネスモデルの変化など、とまどうことも多いですが、今は「ならし運転期間」として、週3日勤務からスタートで仕事をすることを認めてもらっています。

経営者のDさんは、「確かに、はじめは、社員ごとのニーズに応えるのは大変でした。でも、引き継ぎ方法、コミュニケーションの取り方、シフトの組み方などを工夫して、それをシステム化してしまえば、働き方をカスタマイズするのは意外と簡単です。多様な勤務形態を認めることが、いい人材の確保につながっています。」と言います。

このように、女性起業家は、「いい雇用主」としての先駆的モデルの構築者でもあるのです。


 

ライフステージに応じた多様な働き方の実現に向けて

近年、ワーク・ライフ・バランスに関する仕組みづくりはかなり進展しました。育児・介護休業制度が普及し、取得率も上がってきています。しかし、いくら制度を完備しても、それだけでは対応しきれないケースは必ず出てきます。海外に1年間放浪の旅に出たい、病気というほどではないけれど体調がよくないので出勤回数を減らしたい、彼女ができたのでプライベートの時間を増やしたい、キャリアアップのため資格試験の勉強をしたい、等々。これらすべてのニーズに配慮するのは本当に大変なことですし、こんなニーズには配慮しなくてもいい、と思うかもしれません。

しかし、一度視点を変えてみてください。社員の「仕事外活動」は、仕事にプラス効果をもたらす可能性が大いにある、という前提で考え直してみてください。まず、プライベートが充実した社員は、会社に対する満足度や忠誠心が向上し、業務の効率化が見込めます。また、勉強や旅行などの新たな人生経験を積むことによって、いいアイデアを出すことも多々あります。さらに、希望が通らなければ退職してしまったかもしれない優秀な社員の離職を防ぐこともできます。フレキシブルな会社だという評判が高まれば、質の高い人材からの入社希望も高まります。


「それは分かるけど、具体的にどうすればいいんだ。」と思われる方もいるでしょう。その時は、ご紹介したような女性起業家の事例が参考になるかもしれません。女性起業家は、自身としても雇用主としても、日々イレギュラーに対応しています。ここで蓄積された智恵を、是非活用してください。

ただし、そうはいっても、1つの会社ができることには限界があるというのも現実です。会社がある程度の規模になると、全社員の個別のニーズにあわせて勤務形態をカスタマイズするのはかなり困難です。そこで、社内だけで社員の希望をかなえきれない場合には、いったん社外に社員を出して、時期が来たら再び社員を受け入れるということも、もっとあっていいと思います。これはいわゆる「雇用の流動化」ですが、そのような社員の受け皿として、フレキシブル対応が持ち味の女性起業家の会社は、魅力的な選択肢だと思います。規模の大小を問わず、能力やライフステージにあわせた雇用の流動化が進めば、雇用の拡大と安定につながります。

社員も会社もハッピーになるワーク・ライフ・バランスの実現のため、女性起業家の智恵と会社をどんどん活用して欲しいと思います。

<プロフィール>
横田 響子氏
(株式会社コラボラボ代表取締役 女性キャリアデザイン協会理事)
大手情報サービス会社に6年就職後、20代で会社設立し女性起業家の事業継続支援に従事。
従業員20名以下の小規模企業かつ30-40代の女性経営者・個人事業主の経営支援を行う。
WEBサイト「女性社長.net」を通して女性起業家の取組を紹介し経営者に必要な情報を日々発信。新規プロジェクトのパートナー募集や大手コンサルティングファームとのコラボレーションによる女性起業家のコンサルティングサポートなどを企画。年に1回、「J300-女性社長300人が日本を元気にする-」を主催。

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