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学生と考えるワーク・ライフ・バランス

2011年10月11日

法政大学キャリアデザイン学部 教授 武石恵美子

今回のコラムは、東京都の子育て応援とうきょう会議と協働で「仕事と生活の調和を考える学生フォーラム」を開催した法政大学キャリアデザイン学部の武石教授とゼミ生の吉井さんに執筆してもらいました。

同ゼミ生が行った「ワーク・ライフ・バランスに関する大学生調査」によると、ワーク・ライフ・バランスについて「名前も内容も知らない」と回答した人の割合は41.1%、「名前も内容も知っている」は32.9%となっています。


学生の就職活動において、仕事と生活の調和=ワーク・ライフ・バランスが図れるかどうかは重要な関心事になっている。女子学生だけでなく男子学生においても同様である。就職活動でワーク・ライフ・バランスを強調すると、「楽をしたい学生」と誤解されることがあるようだが、学生たちは楽をしたいわけではない。安定した長期継続雇用は期待しにくくなっており、自分で自分の将来のことを考えなくてはならないことに、学生たちは気がついている。自分のキャリアを考えその結果に自分が責任を持たなければならないとすれば、家族をもつ、スキルアップのために学校に行く、地域活動などで生活の幅を広げる、といった「生活」も視野に入れたキャリア設計に、一人一人が自律的に向き合うことは極めて重要である。学生の「ワーク・ライフ・バランス」重視の傾向は、こうした企業と個人の関係の変化が背景にあると考える。

私は、講義やゼミで、これからの社会は女性も社会で活躍する時代になり、男性も子育てに関わることで、豊かな人生が送れるはず、とエールを送るようにしている。しかし、働く人からはネガティブなメッセージも多く、長時間労働で辞めたい、男性が育児休業を取るなんて考えられない、という職場の実態を知ると、働く前から理想と現実の落差の大きさに落胆して、所詮働くというのはそんなもの、と割り切ってしまう学生もいる。しかし、若い学生たちが、この閉塞した状況を打開する大きな力になると私は信じている。そのためには、影響力のある人材になってほしい。つまり、発言力のある人材である。自分たちが働く社会を変えるためには責任を果たし、信頼される人材となることが不可欠で、そこで組織や社会に働きかけることが有効である。社会を変えるには、自分のキャリア、働き方の理想を掲げることが必要である。理想に近づけたいという強い思いが、現状を変える原動力となる。

私のゼミは、「働き方」や「ワーク・ライフ・バランス」に関心のある学生が多い。現状に強い問題意識をもち、自分たちの理想を掲げながらそれを実現するための社会のあり方を真剣に考える彼ら、彼女らに期待している。自分のキャリア設計に責任をもち、その実現のために努力をすることは、企業組織にとってもメリットが大きいはずである。こうした若者のキャリア設計を微力ながら支援していきたいというのが、日々学生に向かいながら思うことである。

教授と学生男女

<プロフィール>
武石 恵美子 氏
(法政大学キャリアデザイン学部教授)
専門は人的資源管理・女性労働論。

お茶の水大学大学院博士課程修了(博士(社会科学))。労働省(現・厚生労働 省)、ニッセイ基礎研究所、東京大学社会科学研究所助教授等を経て2006年4月より法政大学。働き方改革の研究に取り組んでいる。東京都男女平等参画審議会委員。

「雇用システムと女性のキャリア」(勁草書房)、「職場のワーク・ライフ・バ ランス」(共著、日経文庫)など著書多数。   

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